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銅版画

刷ってみよう!
D-1.多版多色刷り

さて、いよいよ多版多色刷り=複数の版を刷り重ねる方法です!!

別ページで詳しく書きますが、多版多色刷りは「見当合わせ」というものが発生します。

まず、決定的な墨版を中心に考えて、それに合わせて1版か2版位で色版を作っていくとわかりやすいと思います。慣れてくれば、4版4色刷りにもトライできますよ〜!

「多版多色刷り」のいろいろなやり方

■すべての版を銅版でつくる

銅版を使用する版数に合わせて用意し、色面などはアクアチント、ルーレットなどを使用して制作します。

刷るときには、まず色版から刷りはじめ、見当に合わせて最後に墨版(主版)を刷ります。薄い色から濃い色へ、というのが原則です。

見当合わせはいろいろな方法がありますが、一番簡単なのは、銅版の外枠のサイズを見当用紙に書いておいて、刷り重ねるときに紙を完全にプレスのローラーから外さず、はさんだままにしておいて、銅版を見当にあわせて交換して刷り重ねる方法です。

見当合わせの詳しい方法は見当の付け方のページを参照して下さい。

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4版4色刷り。
4版全てにインクを詰め終えたところ


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刷り終わるまで紙をプレスから抜かないように刷る

■墨版(主版)だけ銅版で制作して、色版は他の版種で制作

作例は、水性木版で色版を作ったもの。新聞紙に挟んで湿り気を与える程度で(完全に濡らすと色が落ちてしまいますから)銅版の主版を刷り重ねています。

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水性木版で色版を作る
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銅版を擦り重ねる

■インクジェットプリンターも使える!

また、インクジェットプリンターで版画用紙に色版をプリントして、主版だけ銅版で刷る方法もあります。インクはやはり水性なので、色落ちしないように木版と同じように湿した新聞紙等に挟んでおいて刷り重ねます。

銅版画は、どうしても金属なので、インクが油性インクに限られます。(水性インクは弾いてしまいますから)油性インクは、刷りの工程で薄い色、黄色やピンク色などは銅が摩滅して、黒が混じったような色になり、濁りがちです。(メッキをかけると解消しますが、あまり一般的ではありません)その問題が、上記2つの方法ですと水性絵の具を使えるので解消します。

この作例で、女性の頬にうっすらとピンク色がかかっていますが、銅版の色版だとなかなかこういう「薄く、切れ目なく」という調子が難しいのです。プリンターを使うと、手軽に色を変えられていろいろ試すことが出来るのも長所ですね。


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インクジェットプリンターで
色版を作って刷り重ねた例

色版のつくりかた

■まず、墨版を元に、どのような色版が作りたいか考えてみましょう。

ここでは、4版4色刷りのメゾチント作品を例にして、説明をしてみます。

■墨版を完成させる

これが完成した墨版。一度この段階で試し刷りをするといいでしょう。

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■色版のプランをたてる

それに、このように色を付けたい!とします。

この場合メゾチントの4版刷りなので、微妙な調子の調節が可能です。色彩計画は、スカイブルー、クリムソン、レモン、(すべて春蔵インクの色名)黒はシャルボネールの55985という順番で刷ることに決めます。

通常、版画は薄い色から順番に刷るのですが、この場合連続して4版刷り重ねるので、最後の墨版がきれいに刷れるように、直前にベタッとした版がこないように、面積の小さめのレモンの版を墨版の直前にもってきます。

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■刷り重ねのイメージ 1版目スカイブルー

まずスカイブルーの版。墨版以外はルーレットを使って製版しています。

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■刷り重ねのイメージ 2版目クリムソン

1版目のシアンがないところはクリムソンの色が直に出ます。重なったところはスカイブルー+クリムソンで紫色になります。

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■刷り重ねのイメージ 3版目レモン

スカイブルー+レモンで緑色

クリムソン+レモンでオレンジ色

スカイブルー+クリムソン+レモンで、紫とレモンが重なることになりますから、補色関係の混色で茶色になります。

このように、4版4色刷りだと、ほとんどの色を重なりで表現することができます。

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■色の変更

作例の上の絵は、上記のスカイブルー、クリムソン、レモン、55985と同じ色構成で刷ったものです。(刷る色の順番は若干変わっています)

下の絵は、クリムソンの版を替わりにバーミリオンに変えて刷ったもの。オレンジ味が濃くなり、特に茶色の部分の色が変化しています。

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■3版の構成

こちらもカラー・メゾチントですが、レモンとクリムソンを1版にまとめ塗り分けにし、残りはスカイブルー、55985と、3版の構成です。

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■エッチングの色彩銅版画

メゾチントでなく、エッチングとアクアチントでの3版のカラー・エッチング作例です。墨版、シャルボネール社のマゼンダ系紅色の版、ブルーとイエローを塗り分けで1版にまとめています。

エッチング、アクアチントの場合は、版の階調の調整が難しいので、インクは原色ではなく混色して使うことが多いです。

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