銅版画
刷ってみよう!
C-2.1版多色刷り実践編
では、実際に1版多色刷りのプロセスをご紹介しましょう。ここでは、「詰め分け」と「凹凸刷り」を行っています。
1版多色刷りのプロセス
■いつもの通りにインクを詰めて版を拭き上げる。
ここまでは基本の刷りと全く同じです。
凹の部分(腐蝕した部分の線など)に、好きな色のインクを詰めて拭き上げます。この作例では、黒のインクをエッチングの部分に詰めています。
インクを詰めて版を拭く
黒のインクが
拭き上がったところ
■詰め分けをする
この作例では、線以外のドライポイントの部分や油膜の調子のところに、黒を詰めた上から緑色のインクをもう一度詰めて拭いています。
もちろん、最初の段階から違う色を詰めて、違う色に混ざらないように注意して拭く方法もあります。
これで、凹部分は拭き終わりました。
■凸部分にのせるインクの準備
凸部分全体にローラーでのせる色を用意します。
色出しをしたインクを、大理石やガラス板の上にヘラで少しずつのせ、ローラーに均一に巻き付けます。この時、いきなり沢山のインクをローラーに巻き付けてしまうと、ローラーを洗わないと薄くなりません。故に、少しずつ加減を見ながらインクの量を増やしましょう。
ローラーにインクがむらむらに巻き付いていると、銅版上にのせる時むらむらが反映してしまいますので気をつけて。大理石やガラス板の上で、ローラーを縦方向に転がしたら、横方向にも転がすなどして、均一に、かつ銅版に一度でしっかりインクがのるように加減します。
銅版画の1版多色刷りには、あまり厚盛りにせず、薄く盛る方が凹部のインクの色が生かせます。
■ローラーで凸部分にインクを盛る
先ほど拭き上げた銅版に、端から端までローラーでインクを盛ります。
ローラーは、一回転以上しないようになるべく径が銅版より大きいものを使いましょう。(一回転以上転がすと、インクは薄くなってしまいますし、直線の跡がついてしまいます。)
ローラー一回転でカバーできない大きな銅版の場合は、半分ずつローラーを途中で継いで、二度盛りしなくてはなりません。この場合は、多少刷り上がりに「継ぎ目」が出てしまいます。(ただし、銅版の場合、リトグラフほどローラーむらは気にならないので、上手く継げばなんとかなるようです。)
銅版のサイズによっては、リトグラフで使うような大型ローラーが必要になります。
均一に
インクを盛った
ローラーで
端から端まで
インクを盛る
■プレスで刷る
これで版は全ての準備完了!
プレスで刷ります。
刷り上がり
■完成!
この作例では、
- 腐蝕した線の部分=黒いインク
- ドライポイントの部分(薄い線)=緑色のインク
- 凸部=薄黄色のインク
の、合計3色を使って刷っています。