銅版画
刷ってみよう!
A.基本の刷り
なあに、刷ってみてもしダメだったらば、また版を手直しして再トライすればいいのです。
とにかく、ある程度出来て来た段階で、一回刷ってみたほうが制作がはかどります!
ちなみに、制作途中段階で刷ってみることを「試し刷り」と言います。
もうすべてOK!本番!というときは「本刷り」と言います。
■紙を切る
紙の種類と詳しい説明は、道具百科「紙とプレスの話」参照
刷る銅版の大きさよりも、上下左右、各10センチ位の余裕を取って、紙を用意します。
銅版が10センチ×10センチの大きさだったら、紙は(10センチの余裕だったら)30センチ×30センチということになりますね。
少し大きいと思うかもしれませんが、刷った紙は濡れているので、これをパネルに水張りする必要があるのです。テープを貼るぶん、紙の大きさには余裕を持たせて下さい。
■紙を湿す
用意した紙を、刷る枚数だけ用意します。
紙の両面を霧吹きで軽く湿らせます。刷毛などで全体にむらなく水を塗っても良いです。 湿した紙をビニールで包んで置きます。
ビニールは、ごみ袋をカッターで切ったものなどでOKです。
できたら、ビニールの上にパネルを2、3枚のせて軽く重しをしたほうが良いです。
なるべく刷る時にしわが出ないように紙をまっすぐに伸ばしておきます。
紙は刷る前日に湿さなくてはいけない、という人もいますが、私はあまり気にしていません。多少刷りに影響は出ますが、刷る直前に湿しても、試し刷りだったらOKです。
紙を水に浸す
湿した紙をビニールに包む
■プレス機の準備
プレス機の鉄板を必ず真ん中に動かしておいてからフェルトにしわがないように注意して真ん中にセットします。
プレスの圧をかけます。
鉄板を左右どちらかに移動して、プレス機の準備ができました。
圧をかける
鉄板をプレスの
左右どちらかに移動
■下敷き用の紙の準備
プレス機の鉄板の上に敷く下敷き用の紙の準備をします。
これは、鉄板にじかに銅版を置かないためと、紙と銅版の位置を書いておくためです。ロール紙という、安い薄手の紙を使うのが手軽です。
私はいつも銅版の鉄板の上に1ミリの透明な塩ビ板を敷き、下に、薄いポリエステルフィルムに自分がよく使う銅版と紙の大きさを書いたものを置いています。
刷った後、ガソリン等で付いたインクの汚れを拭けば、何回でも使えて便利です。
このような見当を書いた
ロール紙か、フィルムを
プレスに置く。
中心線は、色版を刷るとき
正確に位置を決めるのに
必要。
■銅版にインクを詰める
刷り台に新聞紙を下に引いて、銅版をのせます。
料理用のヘラや、リノリウム版を小さく切ったもので、銅版上にインクを詰めていきます。
あまり乱暴にやると、銅版にキズがついてしまいます。また、銅の粉がインクに混じっていたりするとこれもキズのもとなので注意しましょう。
固いインクを使う人は、銅版をあらかじめウォーマーの上に置いて暖めてインクを詰めたりしますが、国産のインクだったら、版は暖めなくても大丈夫です。
インクなど、刷りに必要な道具の説明は道具百科参照
インクを銅版に
詰める
■寒冷紗でインクを荒く拭き取る
寒冷紗は、使い古した寒冷紗を軽く丸めて「芯」を作り、それに新しい寒冷紗をかぶせて使います。インクでベタベタになったら、白い面にずらしながら使います。
この寒冷紗で、版面をきゅっきゅっと押し回すように動かしていきます。ヘラで詰め忘れた部分も、この段階でインクが必ず詰まるように気をつけて下さい。
確実にインクが詰まったら、今度はインクを回りの新聞紙に吸い取らせるように、縦横に動かして行きます。
この段階では、次の人絹での仕上げ作業がやりやすいように、インクが部分的に溜まったりしないよう、むらを無くすのが目的です。
絵柄が分かる程度に拭けたら、仕上げ拭きの人絹の作業に入ります。寒冷紗で拭きすぎないように注意。
軽く丸めた芯に新しい寒冷紗をかぶせて使う
寒冷紗でインクを詰めながら広げる
■人絹で仕上げ拭きをする
人絹は、寒冷紗と同じく「芯」をつくり、その上に新しい人絹をかぶせて平らな面で銅版を拭くようにします。
銅版画は、凹んだところにインクが詰まる版種。それ以外のところを拭き上げるのですから、あまり力を入れると凹んだところのインクをかき取って逆効果です。あくまで力を抜いて、表面だけを軽く拭くようにします。
つるつるの面のインクが拭き取られて、薄い油膜に覆われたような状態になったらば、完成まじかです。
人絹は拭く面が
平らになるように
■最後の仕上げ拭きをする
ここまでくると、銅版上の絵柄がはっきりと見えて来るはずです。
刷ったときに真っ白にしたい部分を目安にして仕上げ拭きをします。
ここで、人絹を新しく、インクのついてないものに変えます。
真っ白の所の油膜は、このきれいな人絹で、さっさっと拭いて、人絹を新聞紙の上でこすっては、また銅版をさっさっ・・・・ という作業の繰り返しできれいに取れます。
また、効果をねらってわざと油膜を取らない刷り方もありますが、下手にやるとむらむらの汚い調子になりがちなので注意しましょう。
版を斜めに光にあて
油膜の調子を見る
■プレートマークを拭く
銅版の4辺の45度に落とした部分を、「プレートマーク」と言います。
この部分は、布にリグロインを染ませたもので、きれいに拭き取ります。
ガソリンをウエスに染ませて
プレートマークを拭き込む
■版をプレスにセット
湿した紙は、刷る直前に余分な水気を取ります。(ここでは「無地新聞」を吸い取り紙代わりに使っています。)
あまりびしょびしょだと、フェルトが湿ってしまい、しわの原因になります。
見当の上に銅版、銅版の上に湿した紙を置きます。モチロン、紙の表が銅版のインクの付いた面に向くようにします。
紙の表裏の見分け方は道具百科C 紙とプレスの話を参照して下さい。湿しておいた紙の余分な水気を吸い取る
見当に合わせて版と紙をセット
■刷り
フェルトを静かにかぶせて、しわが出ないように引っ張ります。
さあ、いよいよ、プレスを回しましょう!
電動プレスの場合は、スイッチを押せばOK。ローラーに手が巻き込まれないよう、十分注意して下さい。
手動プレスの場合は、ローラー部分にフェルトを巻いて、片手でフェルトを引っ張りながらゆっくりと回していきます。早く回しすぎるとしわがよるなどのトラブルの原因になります。
回し終わったら、いよいよ完成!
ゆっくりと紙をめくっていきます。ちょっとドキドキする一瞬ですね。
フエルトをおろす
プレスを回す
静かに紙をはがす
■ゆっくり完成の感激に浸りたいところですが、まず作品を水貼りしてしまいましょう。
パネルに作品を水張りします。
濡れている紙は少し伸びるため、そのまま乾かすとボヨボヨに波打ってしまいます。
濡れているうちにテープで四辺を固定することで、紙が乾いた時ピンと平らな状態になります。
水張りテープを、紙の四辺の長さに切ります。
切ったテープをスポンジなどで十分濡らし、板に半分、作品に半分テープが貼られるようにします。
あとは乾くのを待つだけ。さあ、感激に浸りましょう。(笑)
水張りテープで作品をパネルに貼る
■作品の乾かし方
テープで水張りする以外に、ロール紙を版画と版画の間にはさんで、板で重しをして乾かすやり方もあります。
たくさん枚数を刷るときには、このほうが手軽ですね。
ただ、湿気で紙が乾きづらいので、一日置きに間のロール紙を取り換えた方が良いです。
吸い取り紙などをロール紙や版画の間に挟み込むのも良いでしょう。