銅版画
道具百科
C.紙とプレスの話
1.ある程度厚さと弾力があり、銅の溝に食い込んでインクを刷り取ること
2. 湿しても丈夫なこと
を満たしていれば何でも使うことができます。
が、エッチングの線も、アクアチントの調子もバッチリ刷り取りたい・・・・ と考えていくと、定番なるものが存在します。
銅版はもともとヨーロッパ発の技法なので、紙も外国産のものが定番です。
■版画用紙(洋紙)
1.竹はだGA
2.ハーネミューレ
3.アルシュ
写真では色味の差だけ少しわかりますね。竹はだは赤みがあり、ハーネミューレはクリーム色、アルシュは真っ白です。

■竹はだGA
試し刷り用の紙。本来は印刷用紙(インクジェットプリンタ用紙?)で、一番厚手のものです。この紙の前は「ケナフ」という紙を使ってましたが廃番になってしまい、こちらが似た紙ということで現在使っています。
安価な紙ですがなかなか優秀で、メゾチントの四版四色刷りでもしっかり刷りとってくれます。ただ、紙自体が固くて弾力性にかけた感じです。
■ハーネミューレ
ドイツ製の紙で、柔らかくフカフカとクッション性のある紙です。
単色一版の銅版画を刷るには最も適している紙で、一度のプレスでどんな調子でも良く刷り取ります。雁皮刷りにも相性が良く、失敗がないです。
ただ、一度のプレスで調子を刷りとるということは、紙が一度で伸び切ってしまうということですので、3版4版と版を重ねる多色刷りには少し工夫が必要です。
■ベラン アルシュ
フランス製の版画用紙です。銅版以外にリトグラフでも良く使われます。
頑丈で固い強い紙で、銅版に使った場合、アクアチントなどの調子はそれほど取らないけれど、エッチングの線はバッチリ刷り取ります。
雁皮刷りなどを行うときには、紙が強靭すぎて糊が利かず、雁皮が剥がれてしまうなどのトラブルがあるため、白黒の版画を制作して雁皮刷りを行う作家にはハーネミューレの方が評判がいいようです。
多版多色刷りで3版4版と擦り重ねる場合にはアルシュを用いることがあります。
■洋紙の紙の裏表の見分けかた
洋紙の場合、紙の端っこに「透かし(ウォーターマーク)」というものが入っています。
アルシュなら「ARCHES FRANCE」BFKなら「BFK」という文字が、紙を光に透かしてみると読めるはずです。この文字が、正しく読める方が紙の表。逆さなら裏です。刷るときには当然表に刷るわけです。
ところが!ハーネミューレ紙だけは、これが逆で、文字が正しく読めるほうが裏面になっているようです。間違えないように気をつけましょう〜
■版画用紙(和紙)
■雁皮(がんぴ)紙
ちり紙のような薄さの紙ですが、和紙特有の強さがあって、水に濡らしても破れにくく丈夫です。
刷りに使うときは、ハーネミューレなどを台紙に使い、画面の所だけ雁皮紙に刷って台紙に貼り込むような形をとります。
これを「雁皮刷り」と言いますが、日本の作家は多くがこの雁皮刷りを行っています。
洋紙、例えばハーネミューレだけに刷った場合、紙がインクの油を吸います。ですが、雁皮紙はインクの油をあまり吸わずに外に弾くような形になるので、ハーネミューレだけに刷るのに比べて、すべてにおいて刷りが良くなります。メゾチントなど、調子が命!の銅版画に良く使われます。

雁皮紙。

ロール状の雁皮紙。
左側のロールがナチュラルな雁皮紙で、
右の白い方は「漂白雁皮」
■雁皮紙
ナチュラルな薄黄色の雁皮が一般的に使われますが、雁皮紙を水色、オレンジ色などに草木染で染めた「色雁皮紙」も和紙の店で市販されており、これは画面全体に貼り込む他に、部分的に切って貼り込んだりもします。
雁皮刷りの詳しい説明は刷ってみよう!B.雁皮刷りを参照

■雁皮の裏表の見分けかた
雁皮紙を指でそろそろと撫でてみましょう。
どちらかが「つるつる」、どちらかが「ざらざら」しているはずです。つるつるなが表、ざらざらが裏です。しかし、実は大変わかりにくい…
上の写真にあるロール状の雁皮だったら、内側が表になっているので、ロールから直接雁皮を切る場合は間違えないのですが、一回平たくしてしまうとなかなか難しいです。「必ずたたむ時は内側が表」とか、自分でルールを作って管理するのが良いですね!
雁皮刷りの詳細はこちらをご覧ください。
■その他の和紙
プレス機
プレス機は刷りに不可欠なものです。
しかし、プレス機は、個人で簡単に購入するわけにはいかない代物です。
何しろ重い!大きい!場所をとる!とても賃貸アパートなどには置くことが出来ません。
美術大学を出たての銅版作家がまず直面するのが、プレス機をどこに置くか。または、自宅におけないから、どこへ行って刷ろうか。という問題です。
たいていの人は、プレス機を貸してくれる所を探して刷っているようなので、これから銅版画を始めようと思う人も、取りあえずご近所を探してみて下さい。
公立美術館や青少年センター、個人の版画工房などで使わせてもらえる所が増えています。
小サイズの「卓上プレス機」というものも、メーカーから出ていますから、 小さいサイズの銅版画しか作らない!という人は購入を考えてみてもいいかも知れません。
