メニュー (クリックで開閉します)

銅版画

メゾチント
B.実践編

では、実際にメゾチント制作のプロセスをご紹介しましょう。ここでは小さい版の場合一番手軽で早い、ルーレットを使います。
メゾチント作例

版の準備

■プレートマークを軽く落とす

目立てをするときに、勢いでプレートマークも真っ黒になってしまいますので、ここでは、銅版の角で目立てをする工具が痛まないように、また、試し刷りを刷るときに耐えられる程度に、という目的で、プレートマークは軽く落としておきます。

本刷りをする前に、プレートマークはもう一度綺麗に仕上げます。

mezzo04
軽くプレートマークを
落とす

目立て

■ガイドラインを引く

これから目立てを縦横にしていくのですが、不揃いに目立てをすると、削っていってハーフトーンが出てきたときに、少し目立ての「目」が気になってしまいますので、なるべく直線でルーレットを動かしていく必要があります。

そこで、ガイドラインとしてマジックやサインペンで直線を等間隔に引いておきます。この線を目印に、ルーレットを動かしていきます。

mezzo05
サインペンで
目印を付ける
mezzo06
ガイドラインに
沿って
ルーレットを動かす

■目立て

後はひたすら目立てをしていきます。

筋肉痛になるほど力を入れる必要はありませんが(笑)、しっかり目立てした方が深い黒が出るのは確かですので、ルーレットに体重をかけるようなつもりで目立てしていきます。

目安として、銅版のキラキラっとした部分が見えなくなるくらい目立てします。サインペンの目印を1マスごとに往復何回、と決めて目立てしていくのもムラのない目立ての方法です。

mezzo07
一方方向に目立てしていく

mezzo08

もう少しでこの方向は終わり。
ここまで所要時間1時間くらい。

■逆方向に目立てする

ここらへんでだいぶ手もつかれてきます。

目立ての作業は一気にやるより、他の作業の合間に、とか、休みながらやった方がいいかも、です。

さらに逆方向にも同じように目立てをしていきます。かなり「目の詰まった」バーが一面にたってきます。

mezzo09
反対向きに目立て
DSCF3258

■目立て完成!

所要時間2時間!!ようやく目立てが完成しました!

まだ多少ぴかっと光る部分があるので、完全にマットになるようにこの後修正します。

サインペンの線はアルコールを使って落とします。

mezzo10
目立てが完成した版

スクレッパーで削っていく

■目立てした版に下絵を転写

カーボン紙を使って、下絵を目立てした版に転写します。

エッチングやドライポイントの時は、「下絵など無くてもかまいません。用心しすぎて固い線にならない方がいいのです。」と説明しましたが、このメゾチントは「黒の版に白い調子を削っていく」技法。やはりおおまかな下絵はあった方がいいでしょう。

これまで大変苦労した目立ての作業によって、アクアチントでは出ないような、深く美しい黒の調子が出るのが特徴です。したがって、絵のどこか一箇所は「削っていない真っ黒な調子」を残し生かしたほうが良いかと思います。

また、多少の失敗は、その部分だけまたルーレットをかけて修正することはできますが、あまりに大きな面や全体的な調子を直そうとして、ルーレットをもう一度かけ直す事は、どうしても調子を鈍くしてしまいがちです。

なるべく最初に、作品の全体のトーンをしっかり計画を立ててから削り始める方がいいかと思います。

故に、下絵はメゾチントの場合はちゃんと作りましょう。また、「黒を残すところ」「一番真っ白にしたいところ」など、調子の幅をよく把握してから作業を始めましょう!

mezzo11

版の上に下絵をのせ、間にカーボン紙を挟んで転写



赤い色のカーボン紙で下絵を転写したところ

■スクレッパーで削っていく

ここでは、永沼版画アトリエの手作りのスクレッパーを使用しています。

削って行くにつれ、絵柄がはっきり見えてきますので、下絵の線のアウトラインがはっきりしたあたりで、版をガソリンで拭き取ると、カーボン紙の線が取れるので、版の調子が良く見えるようになります。

メゾチントは、制作途中でトレーシングペーパーなどを版にかぶせると、調子が良く見えます。また、ある程度作業が進んで、どうしようか迷った時などは、試し刷りをした方がはかどります。

mezzo14
スクレッパーで
削っていく
mezzo15
途中段階

5割方削ったところ


■試し刷り

ある程度削り進めたら試し刷りをします。

刷り方は基本の刷りを参照して下さい。ただ、メゾチントの刷りの場合今までの刷りと違い注意しなくてはならないことがいくつかあります。

●メゾチントは全て「白から黒までの無数の調子の階調」によって絵が作られている。よって、微妙な調子をあまり刷り取らないアルシュ紙などはむいていない。(ハーネミューレ紙のような柔らかめの紙か、雁皮刷りがおすすめです。)

●試し刷りから本刷りまで、出来れば同じ種類の紙を一貫して使った方がいい。試し刷りを見て、「もう少しここは白くしよう」と、版を削って直して、別の種類の紙で刷ったら実は白すぎた、という事態が起こらないようにする。

●版上の無数のバーにインクが引っかかった方が美しい黒になるので、なるべく固く粘りのあるインクを使用する。(チューブ入りの国産インクより、シャルボネール社の缶入りのインクなどの方が粘りがあり固い。また、缶入りインクに、さらにダイヤモンドブラック顔料などを混ぜ、黒さを補強する作家もいる。)

mezzo16
インクは粘りのあるものを>使う
mezzo17
試し刷り完成。
これを見ながらさらに版を削り進めていきます。
DSCF3316.JPG
試し刷り

■再び削っていく

試し刷りを見ながら、まだ削るべき所があれば削っていきます。

基本的にメゾチントは ●削り→試し刷り→削り→試し刷り といった作業の繰り返しで作品を完成に近づけていきます。これで完成した、となったら、最後にプレートマークを綺麗に削り直し、本刷りをします。

▲このページのTOPへ