版画全般
4つのポピュラーな版画
版画を
- 「木版画」
- 「銅版画」
- 「リトグラフ」
- 「シルクスクリーン」
あれ、「木」や「銅」はわかるけど、リトグラフは?
リトグラフの「リト」とは、「石」の意味です。
そのためリトグラフは「石版画」と日本語訳されることも多いです。
シルクはもちろん、絹の事ですね。
一般的に版画はこの4つの「版となる材料の名前」で分けることがポピュラーです。 展覧会のカタログなどで名前だけは知っている方も多いでしょう。
技法を知れば、版画を見る楽しみがいっそう増えますよ!
1.木版画
■水性刷り
木の板(シナベニヤ)などを彫刻刀で彫り、出っ張った部分(凸部)に水性絵具を刷毛などでひき、バレンで紙に刷り取ります。
これは水性絵具をつかうので、「水性刷り」と言うことがあります。
浮世絵などで、日本人には一番親しみのある技法ですね。また、小学校の図画工作で一度はやったことのある方が多いと思います。木目や和紙を生かしたさらっとした表現が特徴です。
■油性刷り
木に油性インクをローラーでのせて、プレス機で刷る方法もあり、「油性刷り」と言います。
水性刷り、油性刷りを併用する木版画作家の方もいます。
■コラグラフ
彫刻刀で彫る以外に、木版にヒモや葉っぱなど色々な物を貼り込んでローラーでインクをのせて刷る技法もあり、これは「コラグラフ」といいます。
また、木版以外にも、紙、塩ビ版などに物を張り込んだり、ジェッソでマチエールを作って刷るやりかたもコラグラフです。
コラグラフとは、「コラージュ(貼り絵)」から来ている技法名です。
コラグラフについては、[コラグラフ]以下で詳しい説明があります。
■木口木版
木を輪切りにした固い木口(こぐち)に、ビュランという銅版画の工具を使って彫る技法は、木口木版(こぐちもくはん)といいます。
(上記、「水性刷り」などで紹介した木版は、板目木版と呼ぶ事があります。)
木口の版はとても硬いので、大変細い線や点が彫ることができます。
一見、銅版画かと思われるような作品ですが、銅版は凹部にインクを詰めて刷るのに対して、木口木版は凸部にインクをローラーで盛るので、白い線の部分を彫って描くことになります。
刷りにはバレンやスプーンの背の所を使って刷ります。
2.銅版画
0.8ミリ位の厚さの銅の板を、工具で彫ったり、腐食液を使って線を彫ったりして版をつくり、へこんだ所(凹部)にインクを詰めます。湿した紙を版の上にのせて、プレス機の強い圧力で刷る技法です。
とても繊細な線や、細かい調子が表現できる技法です。
銅版画については、[銅版画]以下で詳しい説明があります。
3.リトグラフ
別名「平版」「石版画」ともいいます。
まず、細かく砂目をたてた石(現在はほとんどがアルミ版で代用)に、クレヨン、解き墨など油性の性質のもので絵を描きます。
描き終わったら、版全体にアラビアゴムを塗ります。
油性のクレヨンで描いた部分は水をはじくので「親油性」になります。それ以外の、クレヨンが付いていない部分・・・アラビアゴムが塗られた部分は、「親水性」になります。
アラビアゴムが乾いたら、版にスポンジで水をひきます。版の表面は砂目があるので、水はしばらく蒸発しません。この濡れた版に、ローラーで油性のインクをのせます。 すると、描画部分は「親油性」なので、油性のインクがのります。 しかし、他の部分(描画指定ない部分)は、「親水性」なので、ローラーの油性のインクはつきません。
この、水と油の反発を利用して、平らな版でつくる版画を、総じてリトグラフと呼びます。
本来は「石版画」という名の通り、重い石を版に使っていましたが、現在はアルミ版やジンク版で代用する作家が多いので、「リトグラフ」という呼び名は少々あいまいです。それで「平版」と言う事もあります。
4つの版画の中で、一番わかりにくい技法かもしれませんね。
筆で描いた調子や、クレヨンのタッチなど、絵画的な表現ができる技法です。
リトグラフについては、[リトグラフ]以下で詳しい説明があります。
4.シルクスクリーン
「プリントゴッコ」を知っている世代の方には一番身近な技法かもしれません。残念ながら、デジタルプリントの普及によって、製品がもう廃番になってしまいましたが…。
シルクの布に、なんらかの方法で目止めをして描画し、描画部分にインクが通らないようにします。紙を貼ったり、乳剤やニカワで目止めをしたりします。
目止めした布を枠にはって、枠の下に紙を置き、布の上から「スキージー」という平らな大きなヘラで、インクをきゅっと引きます。目止めしたところはインクが通らず、他の部分はインクが紙に刷り込まれます。
シルクスクリーンは、別名「セリグラフ」と言うこともあります。
シルクスクリーンは、塗る目止め用の溶剤によっては、暗室で写真製版の焼き付けが簡単にできるため、写真をつかった表現をする作家が良く使います。
また、比較的短時間で版が作れるため、沢山の色数を使う作家も利用します。 版画は、基本的に一版一色。色の数だけ版をつくらなくてはいけませんから。

ウォーホル
「マリリン・モンロー」