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銅版画

エッチング
A.道具編

銅版画と言えばエッチングと言うくらい、一番有名な技法です。
前ページで紹介したドライポイントと違うのは、防蝕剤と腐蝕液を使って、力加減ではなく腐蝕の時間差で線の太さや濃淡を作ることです。
線は金属のめくれの「バー」は腐食作用でなくなり、手で引っ掻くよりも深く銅を掘り下げますので、ペン画のようなシャープな線が得られます。
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受講生作品部分
完成作品はこちら

エッチングに必要な道具

(銅版画を作る必要最低限の道具はドライポイント道具編を参照)

ニードル

エッチングはグランドという防蝕膜を銅版表面に薄く塗り、ひっかいて銅を露出させた所を腐蝕液で腐蝕する、というプロセスをふむので、線描に力は入りません。グランドをはがせれば、彫りは腐蝕液がやってくれるわけです。そこで、木の柄のついた「ニードル」を使うことが多いです。ポイントより木の柄がついた分、握りやすいからです。
もちろん、ポイントもエッチングに使えますよ!

ポイントと違うのは、あくまでグランドを剥がすだけなので、先が研げてなくてもかまわないと言うことです。わざと砥石で先を丸めて、銅に引っ掛からず描きやすいようにしてもOKです。

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グランド

グランドは、固まった状態で固い(ハード)柔らかい(ソフト)かによって2種類に分かれ、また、それぞれが、固形か液体かで2種類に別れます。

  • ハード・グランド
    • 固形
    • 液体
  • ソフト・グランド
    • 固形
    • 液体

ハードグランド

ハードグランドは、描画に普通に使うためのグランドです。固まった状態で手を触れても、ベタベタしないように作られています。

固形ハードグランド

固形のものはあらかじめ版をウォーマーの上で熱しておいて、版の上で溶かしてローラーで伸ばして使います。

手間はかかりますが、塗る厚さがコントロールでき、厚ぼったくなるミスがありません。また、一回腐蝕して線が刻印されている版に、もう一度グランドを塗り描画したい時、液体のものよりも「線が割れる」という、前に腐食した線が太くなってしまう現象が少なくてすみます。

そういった理由から、永沼版画アトリエではこの固形ハードグラウンドをウォーマーで温めた銅版にローラー引きしています。

逆に、欠点は薄くなりすぎるとピンホールができたりトラブルの元になること、ローラーに均等にグランドを巻き付けないとムラになることでしょうか。

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ウォーマー。下に電熱器を入れ、
上のプレートに銅版を置いて使う。

液体ハードグランド

液体グランドは、版に刷毛などで塗ったり、「流し引き」という方法で使います。市販のものはそのままだと濃いので、リグロインで適当に薄めて使います。

液体の物は、手軽ですが、版の大きさによって濃さを調整する必要があります。(大きな版ほど濃くなり、小さい版だと薄くなりがちなので)

ただし、技法によってはこの液体の方を使わなくては出来ない技法があります。(シュガー・アクアチントなど)

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ソフトグランド

ソフトグランドは、ハードと違うのは、版が冷えても少しべたべたします。これは、固まらない油脂をあらかじめ混ぜてあるためです。用途は、いろいろなものを押し付けてマチエールを取るためのものです。

ハードグランドと同じく、固形タイプと液体タイプがあります。写真は固形のソフトグランドで、ハードグランドと同じように暖めたウォーマーの上でローラーで引きます。少しの熱ですぐに溶けるので、あまり熱しすぎないのがコツです。

ソフトグランドを引いた銅版の上に、葉っぱやガーゼ、アルミホイルなど、マチエールを取りたい物を直接置いて、上にロール紙などを引き(フェルトの汚れ防止)プレス機で軽めにプレスし腐蝕液に浸けマチエールを作ります。

ソフトグランドの詳しい技法は、[C.ソフトグランド]を参照してください。

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黒ニス(止めニス)

グランドと同じく防蝕効果のあるものですが、ずっと粘度があり筆で厚塗りできます。

エッチングを腐蝕して、「この線はもう十分な太さ」と思ったら、そこだけ黒ニスを塗ります。 また、版の裏面にも「裏止めニス」として全面に塗ることがあります。

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壁紙、ガラスフィルム

版の表側、つまり描画面はグランドを塗るのですが、裏側はそのままむき出しの銅だと腐蝕バットに入れた時に溶けてしまいます。版の裏までうっかり腐蝕すると、銅版に穴があいたりする危険性も・・・

そこで、上記の黒ニスを裏面に塗ったりして防蝕するのですが、黒ニスもホワイトガソリンで溶けますので、表面のグランドを取ったり、グランドを塗り直したり、といった作業のたびに塗り直さなくてはなりません。かなり面倒です。

そこで、版の裏に塩ビ製のシール付き壁紙(ホームセンターや東急ハンズで売っているもの)を張ります。

私は透明なガラスフィルムを使っています。これは、貼る時に空気が入りにくく、熱で溶けたりしないからです。

しかし、この四半世紀に渡って愛用していたガラスフィルムがついに廃番になってしまいました。(泣)残念ですが他の物を探すしかありません。銅版の裏がすでに防蝕コート済みの銅版も売っていますので、そういうものを使うのも良いですね。

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ガラスフィルム
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ガラスフィルムを貼った銅版

ドライヤー

意外と無くてはならないもの、それはドライヤー!

普通に髪を乾かすヤツでOKです。洗った版の水気を乾かしたり、黒ニスをさっと乾かすのに必需品です。

腐蝕液の準備

エッチングで一番厄介なのは「腐蝕液」です。現在一般的に使われているのは「塩化第二鉄」と「硝酸」です。

銅を溶かす薬品だから、どう考えてもヘルシーではないし、環境に優しくもありません。

ただ銅版画に使うものは猛烈に強い強酸ではないので、用心深く使えばまず大丈夫です。とは言え、塩化第二鉄は付着力が強く、それ自体でサビをだすので、台所などで使っていると流しがすぐにまっ茶色になってしまいます。

塩化第二鉄は腐蝕した銅の成分が塩化第二鉄自身の中に溶けていくのに対し、硝酸は気体になって空中に揮発していきます。この時出るガスが人体に有害。永沼版画アトリエでも以前硝酸を使用していたのですが、現在は使用していません。

また、腐食液を取り扱う時は素手は避け、耐酸性のゴム手袋などを必ずはめて作業するようにして下さい。

塩化第二鉄

黒い液なので、銅版の腐蝕の具合が、いちいち液から取りださなくては見れない点が欠点です。

しかし、人体に有害なガスなどは出しません。銅の成分は液にとけて、「沈殿物」になって沈みます。また、温度にもほとんど左右されません。

エッチングの時、線の部分が腐蝕されると、描画面を上にして二鉄につけている場合銅は沈殿物となって線の所に沈みますから、腐蝕のスピードが落ちます。これを避けるためには、ゴムなどをバットの液の中に置いて、その上に描画面を下向きにして銅版をのせます。

しかし、画面を下向きに浸けるのはグランドにキズなどリスクがありますので、アトリエでは通常上向きに入れています。腐食速度が遅くなるのかもしれませんが、まず普通に作業が可能です。気になる方は、たまに液の中で版を揺すると良いでしょう。

性質上、銅の彫られ方が直進的です。

版画材料として売っているものは、2倍位の水で薄めて使います。また、固形のものもあり、これも水に溶かして使います。

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腐蝕に必要なその他の道具

溶剤やポロ切れ(ウエス)など必要なもの

道具百科 溶剤とその他の必要な道具に詳しくまとめてありますのでご覧ください。

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