リトグラフ
木版リトグラフ
A.道具編
木版リトグラフは多摩美術大学の小作青史先生が考案された技法です。
特徴としては
- 描画するだけではなく木版に彫りを入れた表現ができる。
- 通常のリト用インクよりも柔らかめのインクで刷る事ができるため、
木版プレス機で刷る以外にもバレンを使ったり
足で踏んで圧をかけて刷ったりできる。
- 版材料、製版材料が身近な物でできる。
・・・などなど、「リトグラフをやってみたい!けれど近くに工房がなくて・・・」とお悩みの方にはホントに嬉しい技法です。材料も新日本造形から市販されていますから、ぜひ皆さまお試しあれ。
この木版リトグラフのページは
多摩美術大学版画研究室の方々にご協力頂きました。
ここで改めて御礼申し上げます。
木版リトグラフを考案された、
多摩美術大学リトグラフ教室の小作青史教授
まず道具をそろえよう!
ここに書いてある道具は道具百科に写真入りで詳しい記述があります。
■版材
木版(プライウッドグラフ)
プライウッドグラフというのは新日本造形から出ている、製版材塗布済みの木版(ラワンベニヤ)です。
これはベニヤにカゼインを塗布してある物です。
ここで紹介している木版リトグラフの方法では、目止めのために木版に「カゼイン」を塗布しますが、粉末状のカゼインはアンモニアで溶解させなくてはいけないので猛烈な便所臭さが(笑)します。
そこで、だれでも手軽にリトグラフが楽しめるようにと塗布済みの物が市販されているので、これを利用しない手はありませんね。
もちろん、自分でカゼインを使って塗布しても。
市販されているものは30×45センチ、2.5ミリ厚のものです。
■描画に必要な道具
- ソリッドマーカー
この木版リトグラフの技法では、通常のリトクレヨンやダーマトグラフは使用できないので注意!
ソリッドマーカーは強力な油性の性質で、色々な素材の上にかけるクレヨンのようなもので、文房具屋さんなどで売っています。
太字用、細字用があります。
- 解墨
線ではなく筆で調子をつけるための墨です。
水で溶かしたりシンナーで溶かしたりして使います。
- 彫刻刀
描画だけでなく、彫りを入れて作品にアクセントを付けられるのが木版リトグラフの楽しいところ。
丸刀、平刀、三角刀などお好みで使い分けましょう。
■製版、刷りに必要な道具
- アラビアゴム(SK液)
描画後、版全面に塗って、描画部分以外のところを親水性にするのに使います。
- スポンジ
版を湿すのに使います。
リトグラフに使うスポンジは、水もちが良いものが「リトグラフ用」として画材屋で売っています。
- 版画用油性絵の具
通常のリトグラフは、「リト用インク」といって、少し硬めで粘りのあるインクを使うのですが、
この木版リトグラフの場合は画材屋さんで手に入りやすいチューブ入りの「木版用(凸版用)油性絵の具」で大丈夫!サクラ絵の具などのメーカーから出ています。
- ローラー
これはリトグラフ用の大きなゴムローラーです。
画面の大きさに合わせてローラーの幅を選びます。
- 水彩絵の具
黒いインクを盛った後、版にスポンジや筆を使って水彩絵の具で彩色してから刷ると、1版多色刷りが楽しめます。
版画の場合は透明水彩などよりもガッシュや粉絵の具などの方が良いでしょう。
- エッチ液またはレモン汁
版にインクを盛るときに、リトグラフは「平版」平らな版ですから、うっかり力強くローラーを回しすぎたり、版にスポンジで水を引くのを怠けてしまったりすると(笑)描画部分以外の所にまでどーーっとインクが乗ってしまったりします。
これを「版がつぶれる」と言います。
特に木版リトグラフの場合はアルミ版などと違って版自体に凹凸がありますから、汚れが出やすいのです。
インクを盛っているときに汚れが出たらこのエッチ液を使って洗い落とします。
エッチ液が手に入りにくいという方には朗報、なんとレモン汁を使っても同様の効果があるのですよ!
生のレモンは高くてすぐにカビが生えますから(笑)ショーチュー用のビン入りレモン汁を使うといいですね。
ちょっと酸っぱい匂いがしちゃいますけど・・・。
- 印刷用クッション
厚紙に緩衝材を貼った物を用意し、この上に版と紙を置くことによってプレスをかけたときに紙になるべく均等に圧力がかかるようにします。
■版画プレス機(「木版用プレス機」または「木版リトグラフ用プレス機」)
木版リトグラフ用のプレス。
版を置くベッドプレートも
木でできているので、
軽くて値段も安価、
さて、この技法では木版を使いますので、通常のリトプレス機ではなく木版プレス、またはバレンや足踏み刷りでも大丈夫。
この写真のプレス機は多摩美術大学で使われている木版リトグラフ用プレス機ですが、安価で重さが軽いのが利点。
「木版プレス」として市販されているものも使えます。
通常のリトグラフ用プレス機というものは巨大な鉄の塊のようなもので、大変重量があります。それを一般家屋に設置するためには、床を補強したりしなくてはなりません。 ましてや木造賃貸アパートに住んでいる方などはとても気楽に置ける代物ではありません。
むりやり設置して地震でも起きたときは・・・。 思っただけでぞおっとしますね(^^;)
最近は木版リトグラフだけでなく、アルミ版を使ったリトグラフを制作する作家でも木版プレス機を使用する人が増えています。
わたしの版画仲間でも、木版プレスを使用している人がいます。もちろんある程度慣れや経験が必要ではありますが、十分な刷りができるそうです。
環境が整っていてリトプレスが置ける人、どうしてもリトプレスでなくてはいけない、と考えている人ならば無理やり木版プレス機を使用する必要はないかもしれません。
でも、日本の住宅事情を考えると、だれでもリトプレスを設置できる環境にあるとは言えませんから、「リトグラフがやりたい!でも近くに工房もなくて、アパート住まいだし・・・」という方は木版プレスを一考される価値はあるのでは。
もともとリトグラフはヨーロッパ発・印刷の技法として考えられたものです。
現代の日本で生活している私たちは、自分たちの生活空間や絵柄にあった、自分なりの方法を見つけていくのが賢いやり方ですよね。