銅版画
エッチング
C-2.ソフトグランド応用編・鉛筆エッチング
普通の「エッチング」はハードグランドを塗ってニードルで描画しますが、こちらは鉛筆タッチの柔らかい線を表現できます。
ソフトグランドを使った鉛筆エッチング。
ソフト・グランド応用編
■ソフトグランドを塗る
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と同様に、銅版にソフトグランドを塗ります。■下絵を描いたトレーシングペーパーをのせる
ソフトグランドを塗った銅版に直接描画するのではなく、「トレーシングペーパーに圧力をかけて、ソフトグランドに描線のところだけ穴をあける」というのがポイントです。
銅版にそっとトレペをかぶせ、トレペに7Hなどの硬い鉛筆でドローイングします。
■描画
ソフトグランドは柔らかいので、鉛筆でトレペに描いた描線の所の部分が、トレペの裏側につきます。つまり、描線の部分が薄くなります。その部分が腐蝕液につけた時、腐蝕する・・・というわけです。
注意ですが、トレペの上から何度も線をなぞると、トレペの裏側に付いたソフトグランドが銅版に逆戻りしてしまいますので、何度もなぞったりしないように。
■トレペをめくって確認
写真では分かりづらいのですが、トレペの裏側にはソフトグランドの油がついています。また、銅版は、線描の部分が白く抜けています。
■塩化第二鉄で腐蝕
塩化第二鉄に入れて腐蝕します。
描画の時に筆圧が弱かったなどの理由で、腐蝕時間は差が出ます。あくまで時間ではなく版の状態を見ながら腐食しましょう。腐食したら描画した線が黒く変色します。
腐蝕が終わったら、ソフトグランドをホワイトガソリンなどで取り除きます。
■試し刷り
この作例は、塩化第二鉄で15分ほど腐蝕したものです。ハードグランドにニードルで描画するのとは違い、早く仕上がるのが魅力ですね〜。鉛筆タッチの柔らかい線が腐蝕できました!
「鉛筆エッチング」は、山本容子さんが使っていた技法として有名です。
固い鉛筆の他、ボールペンを使ってみても違う感じになるし、トレペの他に薄手の別の紙を使ってみても良いかもしれません。鉛筆の先が尖っていたり丸くなっていたりでも、変化するでしょう。
ソフトグランドは、ハードグランドに比べてベタベタしているために、ちょっと手でさわったりすると指紋が腐蝕されたり、トラブルが何かと多いので、あまりそういうことが気にならないざっくばらんな方向きの技法かもしれません。緻密なデッサンというより勢いの良いドローイングの作品に向いているように思います。
鉄筆のように描画のときに銅にひっかからない技法ですので、柔らかい線のドローイングっぽい作品にはもってこいですね〜。
ソフトグランドを使った鉛筆エッチング。
さらに応用編 鉛筆エッチングで色版画
ソフトグランドを塗った銅版を3枚用意します。 トレーシングペーパーで上記のように墨版を作ったら、トレペはそのままで銅版だけ入れ替えます。色鉛筆で色を塗ることをイメージして色版を作ります。
右上の作例は、黄色と赤の版を塗り分けで、黄色と墨版の3版で、全て鉛筆エッチングで作った作例です。色版だからといっていちいちメゾチント、ルーレット、アクアチントなどを施さずに独特の重ねができます。
下の作例は、スカイブルーの版だけアクアチントを使って、黄色の版と墨版は鉛筆エッチングで作った例。鉄筆でハードグランドエッチングをするのと違って柔らかい描線と色のミックスができます。