ワーグナーが大好き!

1999.4.21 2003.09.11re-update

ワーグナーの作品はほとんどオペラ(正確には楽劇)ばっかりなので、オペラを聴かない方にはまるで馴染みがないでしょうね〜。しかも、たとえオペラが大好きな方でもワーグナーは苦手とする方も多いような・・・。

ワーグナーの作品て「長い!」「しつこい!」「くどい!」オペラですので上演中にラブシーンの所でつい「うとうと」しちゃった人が、目をさましてみたらまだ同じラブシーン場面だったとかいう逸話もあるほどです。なにせ、あの「ニーベルングの指輪」という作品は、全部上演するのに4晩もかかる代物です。間に1、2日くらい休みの日が入ることが多いので、見終わるまで5日か6日かかっちゃう。なんとも気の長いオペラです。

・・・・しかし、私keroは、このワーグナーが大好きなんですね〜。

短い時間では自分の言いたいこと全部つぎこめない。色んなこと詰め込みたい。空想が空想を呼んで、妄想が妄想を呼ぶ。・・・と、どんどん肥大していった19世紀のロマン主義。

ワーグナーとかマーラーは肥大したロマン主義の王様か皇帝さまですね。 対極にあるのが、バッハやモーツァルトのシンプルですうっとした響きです。

わたしにとっては「トリスタンとイゾルデ」の対極にはモーツアルトの「魔笛」があり、体調・気分・落ち込み度・高揚度等によりこのどちらかが常に聴きたくなります。しかし、基本的にモーツァルトがいいなあ・・・・と思いつつも、なぜかワーグナーに戻っていってしまいます。日本料理の味付けが基本的に好きなのに、なぜかしょっちゅう中華料理や激辛エスニック料理を食べてしまうのと似たようなもんですね。

学生時代、片道1時間余の通学時。毎日家を出るとき、「今日はトリスタンの1幕目にしよう〜」と、ほぼ演奏時間7〜80分のカセット(バイロイトのライブをエアチェックしたもの)をウォークマンで聴きながら学校へ行き、帰宅する時は「今度は神々の黄昏の3幕目にしよう〜」と、これまたワーグナー漬け。2年間の大学院時代、ずーっとこればっかでした。

それだけ聴いても全然飽きない自分も恐ろしかったけれど。(^^;)

ところが、最近そんなkeroに異変がっ!!

どういうわけか、昔ほどワーグナーを聴く気にならなくなってしまったのです・・・。はっと気づくと、バッハとかブラームスとか聴く方が多くなっているような。CD売り場に行っても、バロックのコーナーに行くことが多くなってしまったような。なんでだろ!?

あまり深く追求したくないけれど、こ、これは「歳のせい」だろうか!?そう言えば最近は焼き肉屋より寿司屋に行く方が食欲をそそるような。

10年前だったら「火星に行くとき1枚だけCDを持っていってよろしい。さて、君は何を持っていく!?」と問われたら、迷わず「トリスタンの3幕目っ!!」と答えたのだが。今ではうーん、どうしようかかなり迷われます・・・。これって、歳のせいというより、少しは聴く音楽の幅が広がってきた証拠なのではないかしら。と、自分に言いきかせておりますが。(^^;)

そうはいっても、やっぱり、「たまにだったら」ワーグナー好きです。なにせ若い頃に死ぬほど聴きまくった音楽、もうどうにもアタシの身体から出ていきゃしません〜。今もこうして文章を書きつつ、BGMはタンホイザーだったりして。ワグネリアン・kero!それはきっと死ぬまで続くことでしょう。


KEROのオススメのディスコグラフィー



●クライバー指揮「トリスタンとイゾルデ」(CD)

ルネ・コロの歌うトリスタン、アタシの一押しです。特に3幕目の死と絶望感といったら、もうたまりません〜〜。ベーレンスのイゾルデも繊細で素敵です。

●バレンボイム指揮「トリスタンとイゾルデ」ポネル演出(ビデオ)

80年代バイロイト音楽祭の上演記録。今は亡き演出家、ポネルの、オーソドックスではありますが素晴らしい演出、そして美しい舞台装置。照明の巧みさ。 こちらもルネ・コロがトリスタンです。

三幕を通じて樹がいろいろな形で舞台装置に登場します。 その幕の内容を象徴するかのように、船の舳先として固い形だったり、 豊かに葉のついた美しい形だったり、落雷で二つに裂けた形だったりします。中でも2幕目の美しさは白眉です。

●ブーレーズ指揮「ニーベルングの指輪」シェロー演出(ビデオ)

70年代のバイロイトの上演記録。今見ても大変現代的で面白いです。私は指輪全曲は他に、レーンホフ演出/ミュンヘンオペラ版、メトロポリタンオペラ版、クプファー/バイロイト版、などを見たことがあり、それぞれ楽しみましたが、このシェロー版が一番、歌手の演技なども含めて完成度が高いと思います。

ワーグナーの楽劇は演出が最重要。(とkeroは思ってます。)作曲家自身、「音楽付きの劇、それが楽劇だ!音楽は劇に奉仕するのだ!」と言っております。したがって、演劇として「見て」面白くなければ駄目なのです。バイロイトではそういう作曲家自身の意志を尊重し、常に斬新な演出家を起用していますが、このパトリス・シェローの演出はその先駆けとなった作品でしょう。

パトリス・シェローはフランス人で、もともと映画畑の人。 「王妃マルゴ」を見たけど、これもすごく良かったです。

●ネルソン指揮「さまよえるオランダ人」クプファー演出(ビデオ)

クプファーはこの80年代のオランダ人の演出によって一躍ワーグナー演出の草分けになった人です。他にも指輪全曲も演出しています。以前テレビでタンホイザーの演出も見ましたが、す〜〜ぅごい良かったです!!

このオランダ人の演出の特徴は、なんといっても「全てがゼンダの妄想」というオチ。ゼンダ役のバルズレフさんは高い所に階段ごと宙づりになったりして気の毒ですが(高所恐怖症の方だったらきっと声がでませんよね)、非常に面白い演出です。しかも、演出の完成度があります。

オランダ人という作品に、こんなに想像力を飛躍させる「音の空間」があろうとは思いませんでした。これが良い演出でワーグナーを見ることの醍醐味ですよね!