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版画HANGA百科事典

銅版画

メゾチント
B.実践編

では、実際にメゾチント制作のプロセスをご紹介しましょう。ここでは小さい版の場合一番手軽な、ルーレットを使います。
メゾチント作例
この作例は
永沼版画アトリエの受講生の方の
作品を使わせていただきました。

版の準備

■プレートマークを軽く落とす
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軽くプレートマークを
落とす

目立てをするときに、勢いでプレートマークも真っ黒になってしまいますので、ここでは、銅版の角で目立てをする工具が痛まないように、また、試し刷りを刷るときに耐えられる程度に、という目的で、プレートマークは軽く落としておきます。

本刷りをする前に、プレートマークはもう一度綺麗に仕上げます。

目立て

■ガイドラインを引く
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サインペンで
目印を付ける
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ガイドラインに
沿って
ルーレットを動かす

これから目立てを縦横にしていくのですが、不揃いに目立てをすると、削っていってハーフトーンが出てきたときに、少し目立ての「目」が気になってしまいますので、なるべく直線でルーレットを動かしていく必要があります。

そこで、ガイドラインとしてマジックやサインペンで直線を等間隔に引いておきます。この線を目印に、ルーレットを動かしていきます。

■目立て
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一方方向に
目立てしていく
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もう少しで
この方向は終わり。
ここまで所要時間
1時間くらい。

後はひたすら目立てをしていきます。

筋肉痛になるほど力を入れる必要はありませんが(笑)、しっかり目立てした方が深い黒が出るのは確かですので、ルーレットに体重をかけるようなつもりで目立てしていきます。

目安として、銅版のキラキラっとした部分が見えなくなるくらい目立てします。サインペンの目印を1マスごとに往復何回、と決めて目立てしていくのもムラのない目立ての方法です。

■逆方向に目立てする
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反対向きに目立て

ここらへんでだいぶ手もつかれてきます。

目立ての作業は一気にやるより、他の作業の合間に、とか、休みながらやった方がいいかも、です。

さらに逆方向にも同じように目立てをしていきます。かなり「目の詰まった」バーが一面にたってきます。

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■目立て完成!
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目立てが完成した版

所要時間2時間!!ようやく目立てが完成しました!

まだ多少ぴかっと光る部分があるので、完全にマットになるようにこの後修正します。

サインペンの線はシンナーを使って落としますが、完全には落ちず、少し残ります。が、実際にスクレッパーで削っていったり、試し刷りを繰り返している間に全く気にならなくなりますので、ご安心を。

スクレッパーで削っていく

■目立てした版に下絵を転写
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版の上に
下絵をのせる
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カーボン紙を
間に挟んで転写
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下絵の
転写完成

カーボン紙を使って、下絵を目立てした版に転写します。

エッチングやドライポイントの時は、「下絵など無くてもかまいません。 用心しすぎて固い線にならない方がいいのです。」と説明しましたが、なにせこのメゾチントは「黒の版に白い調子を削っていく」技法。やはりおおまかな下絵はあった方がいいでしょう。

メゾチントの技法は、これまで大変苦労した目立ての作業によって、アクアチントでは出ないような、深く美しい黒の調子が出るのが特徴です。したがって、絵のどこか一箇所は「削っていない真っ黒な調子」を残したほうが良いかと思います。

また、多少の失敗は、その部分だけまたルーレットをかけて修正することはできますが、あまりに大きな面や全体的な調子を直そうとして、ルーレットをもう一度かけ直す事は、どうしても調子を鈍くしてしまいがちです。

なるべく最初に、エスキースなどを元にして、作品の全体のトーンをしっかり計画を立ててから削り始める方がいいかと思います。

故に、下絵はメゾチントの場合はちゃんと作りましょう。また、「黒を残すところ」「一番真っ白にしたいところ」など、調子の幅をよく把握してから作業を始めましょう!

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赤い色のカーボン紙で下絵を転写したところ
■スクレッパーで削っていく
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スクレッパーで
削っていく
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途中段階

ここでは、手作りのスクレッパーを使用しています。

削って行くにつれ、絵柄がはっきり見えてきますので、下絵の線のアウトラインがはっきりしたあたりで、版をガソリンで拭き取ると、カーボン紙の線が取れるので、版の調子が良く見えるようになります。

メゾチントは、制作途中でトレーシングペーパーなどを版にかぶせると、調子が良く見えます。また、ある程度作業が進んで、どうしようか迷った時などは、試し刷りをした方がはかどります。

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5割方削ったところ
■試し刷り
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インクは
粘りのあるものを
使う
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紙をそっと
版からめくる
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試し刷り完成。
これを見ながら
さらに版を
削り進めていきます。

ある程度削り進めたら試し刷りをします。

刷り方は基本の刷りを参照して下さい。ただ、メゾチントの刷りの場合注意しなくてはならないことがいくつかあります。

●メゾチントは全て「白から黒までの無数の調子の階調」によって絵が作られている。よって、微妙な調子をあまり刷り取らないアルシュ紙などはむいていない。(ハーネミューレ紙のような柔らかめの紙か、雁皮刷りがおすすめです。)

●試し刷りから本刷りまで、出来れば同じ種類の紙を一貫して使った方がいい。試し刷りを見て、「もう少しここは白くしよう」と、版を削って直して、別の種類の紙で刷ったら実は白すぎた、という事態が起こらないようにする。

●版上の無数のバーにインクが引っかかった方が美しい黒になるので、なるべく固く粘りのあるインクを使用する。(チューブ入りの柔らかめのインクより、シャルボネール社などの缶入りのインクの方が固い。また、缶入りインクに、さらにダイヤモンドブラック顔料などを混ぜ、黒さを補強する作家もいる。)

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試し刷り
■再び削っていく
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さらに削っていく

試し刷りを見ながら、まだ削るべき所があれば削っていきます。

基本的にメゾチントは ●削り→試し刷り→削り→試し刷り といった作業の繰り返しで作品を完成に近づけていきます。これで完成した、となったら、最後にプレートマークを綺麗に削り直し、本刷りをします。