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銅版画

メゾチント
A.道具編

メゾチントは浜口陽三さんや長谷川潔さんの作品でおなじみ。ビロードのような深い黒の階調が大変魅力的な技法です。
工具さえあれば、腐蝕設備がなくても家で製版の作業が出来るので、初心者の方もぜひ一度はトライしてみて下さい!

目立て

メゾチントの技法は、最初に工具で銅版全体を真っ黒な状態に目立てします。

無数の点や線がドライポイントのようにバーが立っている状態で版に刻まれます。そのあと、白い部分をスクレッパーで削り作品を作っていくわけです。

ドライポイント、エッチングなど黒を描いていく技法とは全く逆の作業になります。

厳密に言うと、「メゾチント」とはベルソーで目立てしたもののみを指し、ルーレットで目立てした技法は「ルーレット」と言い、ハーフトーンコームで目立てした技法は「ハーフトーンコーム」と言うのですが、ここでは「真っ黒に目立てした版を白くスクレッパーで削っていく方法」はすべて「メゾチント」とします。

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目立てした版

目立ての道具

■ベルソー(ロッカー)

ベルソーの刃の部分には細い番線が何本も入っており、これを銅版の上に乗せて、ユラユラ揺らしていくと、銅版に無数の点が打てるようになっています。刃がなまったときは、先の方を回転砥石などで研いで半永久的に使うことが出来ます。

実際にやってみるとわかるのですが、ものすごい時間がかかります。大きな版を作る方などは、目立てだけで3ヶ月(!)かかる場合があります。

そこで、「自動目立て機」のようなものを深沢幸雄先生が考案されて、実際に新日本造形などで市販されています。これは、ベルソーに重しをつけ、斜めに坂の付いた傾斜のある板の上に銅版を置いて、モーターでベルソーを揺らしながらほおって置いても自動的に銅版を目立てしてくれるもので、大きなメゾチント作品を作る方には必需品でしょう。

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ベルソー



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ベルソーを揺らし目立てする

■ルーレット

上記のベルソーによる目立ては大変、ということで、もう少し小さい版をお手軽に目立てしたい・・・というときには、こちらのルーレットの方が断然早いです。

ベルソーと同じように無数の点が打てるのですが、こちらの方は先の所がローラーのような形になっていて、それに網目のような無数の点がついています。形状的に、研ぐのは無理ですので、長年使ってなまってきたら寿命です。

ベルソーよりは目立ての時に力を入れやすいので、比較的短時間で目立てができます。また、ローラーの網目は、粗目、細目など、密度や深さが色々だったり、線の形になっている製品などもあり、種類も豊富です。銅版全面の目立てに使うのには、ある程度大きい形のローラーの付いたものが良いでしょう。

この、ルーレットを使ったメゾチントの制作過程は次のページをご覧下さい。

ルーレットは、作品の部分だけに目立てする「部分目立て」にも使えます。(右の作例参照。)

ルーレットの他に、「ムーレット」と言って、ローラー部分が丸くカーブしていて、不規則な点を打てる工具もあります。

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ルーレット
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ルーレットのローラーの付いた先端部分。
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ルーレットでの目立て

■ルーレットの部分目立て


上部と下部に部分目立てをしたエッチングと
メゾチント(ルーレット)混合技法の作品。

■ハーフトーンコーム

これは、点ではなくて線を一度に沢山引くために、金具の先端に溝が付いている工具です。。

定規にそって版を一定方向に溝を付けて目立てをしていきます。このハーフトーンコームを研ぐ時には、ドライバーでネジをはずし、回転砥石などで工具を研いでつかいます。

この、道具の研ぎがけっこう面倒くさいので、もし線で目立てをする場合は下のカッターナイフを使った目立ての方がお手軽かもしれません。

縦、横に目立てしても良いのですが、削ったときに線が少し見えるので、斜め2方向に目立てすることが多いです。

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ハーフトーンコームの
先端部分。
溝が付いている。

■カッターナイフ

カッターナイフを使って、これも定規にあてて、銅版に縦横(または斜め2方向)に無数の線を入れていき、真っ黒に目立てする方法です。

特別な工具もいらず、またカッターナイフの刃がなまったときは、ポキポキ折って使っていけばいいので、手軽かつスピーディーです。

また、もっと手間を短縮したいときには、カッターの刃を何枚か重ね、持ち手の所にガムテープなどを怪我をしないようにぐるぐる巻きに貼って、一度に何本も線が引けるようにする、という手もあります。

削った時の調子は、ハーフトーンコームと同じく少し線が見えます。タテヨコ斜めと目立てするとしっかりした調子になります。

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全体をカッターで斜め方向に目立てし、
2つの卵型の所だけ縦横にも目立てした版

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削る道具

■三角スクレッパー

銅版制作の必需品。メゾチントの調子を削る以外にも、プレートマークを綺麗にする時など、欠かせない工具です。

ただ、調子を削る時には、どうしても持ち方が右の写真のようになりますので、力を入れて削り取る時にはいいのですが、繊細なハーフトーンなどの時には少々使いにくいかもしれません。

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■自作のスクレッパー

金ヤスリを加工して自作したスクレッパー。鉛筆握りで削ることができるので、ハーフトーンなどを出すのに大変使いよい工具です。

メゾチントの制作過程では、ほとんどの工程でこのスクレッパーを使っていきます。

自作のスクレッパーについては道具を手作りのページを参照して下さい。

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■バニッシャー

メゾチントでは「真っ白にしたいところ」だけをバニッシャーで磨きます。

バニッシャーを使うといきなり真っ白になってしまうので、殆どの作業はスクレッパーで削っていくようにして、バニッシャーは全体に使わないように注意します。

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