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版画全般

版画 Q&A
3.版画の値段

■Q1:版画の適正な値段や、価値というのは、どのような基準があるのでしょう。

A1:版画にせよ絵画にせよ、「適正な値段」など存在しません。

絵画も商品である限りは、市場の原理によって値段が付けられます。人気のある作品なら高い値段、そうでない場合は安い値段が付くでしょう。

しかし、絵とは後々時代の変化とともに、その評価も変わっていくものですから、この作品が「本当に」価値があるかないかなどは、誰にも言えません。時代の気分や流行で、必ず絵の値段は変化するでしょう。

(もちろん、そんな「時代」や「流行」にも左右されない普遍的な作品が、後世「芸術」と呼ばれて、ルーブル美術館などに飾られていくのでしょうが・・・・。そして、それを時代にとらわれずに見抜く事のできる人が、優秀な評論家とか優秀なコレクターと言われるのでしょうが・・・・。)

したがって、この質問に対しては、版画にしろ絵にしろ、「自分の目で見て」「自分の価値で」購入するべし。というごく当たり前のアドバイスくらいしかできません。 絶対に将来の値上がりなど期待して購入してはいけません。

バブルの時代、日本人は自分の目と自分の価値を使わずに、高額の絵画を買いあさりました。結果は・・・・。皆さん、ご存知ですね。

■Q2:リトグラフとかシルクスクリーンなどの技法の種類によって、版画は値段は変わってくるものなのでしょうか?

A2:

「シルクスクリーンはリトグラフに比べて安い」とか、「銅版画がリトグラフよりも高い」とか、はたまた「油絵は版画より価値がある」などなど、「技法」によって絵の価値が変わるなどとは、まったく根拠のない話です。

確かに技法によって「作品にかける手間や時間」は変わってくるでしょう。が、作品制作にかかった「時間」と作品の「芸術的価値」は全く関係ありません。 したがって絵の値段とも関係ありません。

鼻歌を歌いながら5分で制作した作品でも、名作は名作。10年がかりで作った作品でも、駄作は駄作なのですから。

さて。上に述べた事柄を「一応」大前提として話を続けます。

版画は「一点もの」の油絵や日本画などよりも、何枚もエディション(枚数)を刷ることができるという理由からでしょうか、値段は安めなのが一般的です。特に、日本では、日本画>洋画>デッサン>版画などと、馬鹿げたヒエラルギーが画壇や絵の値段大系の考え方に未だに浸透しております。

油絵の作家の版画の値段よりも、版画を主として制作している「版画家」の版画の方が、全然値段が安い・・・・といった、摩訶不思議な現象は、このヒエラルギーの考え方のためなのです。

いわば専門家の版画作品の方が値段が安い、というのも少々変な話ですが・・・。

でも最近は、「油絵などはとても高額で買えないが、部屋にポスターではなくちゃんとした絵を飾りたい!」・・・という方も多く、版画家の作品がとっても人気なのですね。なにせ、若手の版画家の小品作品ならば、2〜3万円で買うことができるのですから。とても数百万の絵画など買えませんし、とはいえ作品を飾りたいのも人情ですから、これは当然のブームと言えるでしょう。

複数枚を刷ることによって、一つの作品でも沢山の人とコミュニケーションできるのは版画の良いところでもあります。

また、たくさんのエディションを刷っている版画の場合、リトグラフよりシルクスクリーンの方が、制作時間が短くコストが安い、量産がきく・・・などと言う事もありますが、これは一般的ではありません。

先程述べたように、基本的には作品の技法や手間や時間と、価格との間には関係はない、と覚えていて下さい。