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版画全般

版の形式の話

ここでは、もう少し細かく、版画を

版の形式(プリンティングプロセス) によって見ていきましょう。
頭に版と紙をイメージして説明を読むと、良くわかると思います。
なぜ、2種類も分け方を説明するかと言うと
、版の材料による分け方(木版、銅版・・・)だけでは理解しづらい版画の種類が沢山あるからです。

たとえば、木版は凸版・・・出っ張っている所にインクを付けて刷る、と前ページで説明しましたが、木版にニスを塗って彫刻刀で鋭い線を彫り、凹版刷りをする人もいます。

また、銅版は凹版と説明しましたが、銅版を使って凸版刷りを刷る人もいます。

版画のやり方はアイデアしだい。
現代の作家は色々な工夫をして色々な版材料を使っています。
作品を見て、「これはどういう技法で作っているのかなあ・・・」と考えられるようになると、現代版画を見るのもいっそう楽しくなることうけあいです!
ここでは版の形式を大まかに4つに分けます。( 凸 凹 平 孔 )

1.凸版(relief printing)

版の出っ張っている所(凸部)に絵具をつけ、それを刷りとる

代表的な版種

  • 木版(板目木版) いわゆる木版。小学校の時やりましたね。木を縦に挽いた板(シナベニヤなど)に、彫刻刀で凸版を作ります。 板目木版の詳しい説明はこちら
  • 木版(木口木版 こぐちもくはん) 木を輪切りにした硬い版に、銅版用の道具で細い線を彫る技法です。 木口木版の詳しい説明はこちら
  • リノカット リノリウム版を彫ったもの 小学校の時、もしかしたら木版の代用としてやった人もいるかも知れません。 年賀状づくりに利用する人もいるかな? 画材屋や文房具屋で、青や緑色のリノリウム版が売っています。柔らかい版です。
  • その他 紙版(紙を切り貼りしてつくる)実物版(でこぼこした物をそのままつかって、インクをつけて刷る)など。
凸版
 
凸版作例
三枝孝司「記憶の単位」

石の部分はスチレンボードを使った凸版
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2.凹版(intaglio printing)

版のへこんでいる所(凹部)に絵具を詰め、それを刷りとる

代表的な版種

  • 銅版
    銅を直接、または腐食液などを使って凹部を彫り、そこにインクを詰めて刷ります。
    銅版の詳しい説明は、[銅版]以下を見て下さい。

  • 木版で凹版を刷る
    板目木版にニスなどを塗り、彫刻刀で彫った線に油性インクを詰めて刷る。

  • その他
    鉄、塩ビ、アルミニウム、ガラスなどに凹部を彫って刷る、など。
    銅版もふくめて凹版を、「インタリオ」と言うこともあります。

凹版
 

3.平版(planographic printing)

水と油の反発作用を応用し、平面の油の部分にインクを付着させ、それを刷りとる

代表的な版種

  • リトグラフ
    油性のクレヨン、解墨などで描画し、版面を水で濡らしながらローラーでインクを盛ります。
    石やアルミ版、ジンク版、木版を使ったリトグラフも沢山の作家が試みています。
    リトグラフの原理の説明はこちら
    より詳しい説明は[リトグラフ]以下を参照して下さい。
  • オフセット
    亜鉛、アルミニウム等に製版したものを、いったん大きなゴム版面に転写して、それをまた紙に刷ります。
    雑誌などの印刷は今ほとんどこの方法です。

  • コロタイプ
    ゼラチンと重クローム酸カリの混合物が、光によって水に不溶性になり、印刷インクののりかたに変化が起こることを利用した、ガラス製版。

plano
 
木版リトグラフ作例
楠本英治「見慣れた森」

木版の上に描画し、
彫刻刀などで彫り、
リトグラフの方法で製版した
「木版リトグラフ」
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4.孔版(stencil printing)

型紙の切り穴の部分を通して、下の紙にインクを刷り込む

代表的な版種

  • ステンシル
    丈夫な紙を切り抜いて、穴からしたの紙にインクをすり込みます。
    インクを刷り込むのは、ローラーとは限らず、刷毛なども使うことがあります。
    最近は、アーリーアメリカン調の型紙と、色インクのセットなどを良く東急ハンズなどで見かけますね。

  • 謄写版
    原紙(ロウ紙)のロウを、鉄筆や薬品によって処理し、その穴を通してインクを刷り込みます。昔の小学校の学級新聞は、みなこの方法で作ったものです。

  • シルクスクリーン
    原紙の代わりに絹を使い、必要な部分以外は、紙、ニカワ、乳剤などで目をつぶして製版するもの。
    シルクスクリーンの詳しい説明はこちら。
孔版

5.併用版

  • 上記の版形式は当然ミックスしたり、一つの版材で多種の形式を併用できます。

    たとえば、木版で凸版刷りをしたあとに平版のリトグラフ形式(木版リトグラフ)で刷る。色の部分は木版凸版で。線は同じ版を使って凹版で、など。

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角田元美「旅の思い出1998」

木版で、色面を凸版刷りし、リトグラフの平版形式で線描を刷っている。
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6.モノタイプ

版(木でも、銅でも、アルミ板でも何でも)に、直接筆で絵を描画します。例えば塩ビ板のようにツルツルした版なら、油性インクで描いたものをヘラでマチエールをつけたり、デカルコマニーのような効果を出すことができます。その版をプレスで刷りとります。 モノタイプとは、一点物でも、筆で紙に書いたのとは違う効果を求めた、一枚しか刷れない版画なのです。

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青木祐輔「monoA3-97-7-1」
モノタイプ作品
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7.その他

参考資料:日本版画協会画集(社団法人 日本版画協会発行)
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