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銅版画

エッチング
C.ソフトグランド

銅版画は銅を腐蝕などして作った凹凸が、そのまま紙にきれいに刷り取ることができる技法です。 深く彫られた部分は、刷った時にインクが盛り上がり、薄い部分はインクが油膜のようにうっすらとつきます。
故に、銅版画家は皆、マチエール(画肌)にすごーくこだわりがある人が多いようです。 もちろん筆者・中込もそうなのですが・・・。 自分ならではの独特なマチエールを工夫するのも銅版画の魅力のひとつです。
ここからはエッチングの応用編として、腐蝕銅版画での小技集をまとめてみようと思います。
まず最初はソフト・グランド・エッチング。

ソフトグランドで葉っぱの葉脈を転写した作品

ソフト・グランドって?

実践編で説明した、線などを描画するときに使うグランドは「ハードグランド」

ここで使う「ソフトグランド」は、塗ったあとも少しさわるとべたべたする、柔らかいグランドです。

なぜべたべたと柔らかいのでしょうか?

このグランドを塗った銅版の上に、布や紙、壁紙や葉っぱなどを乗せて軽くプレス機を通すと、でこぼこした表面の模様の所だけグランドがくっついてとれて、薄くなります。

これを腐蝕液に浸けると、薄いところが腐蝕するので、布の目や、紙のでこぼこ、葉っぱの葉脈などの模様が出るのです。

つまり、ソフトグランドは銅版にマチエールを転写するためのグランドなのです。この技法を考えた人は頭いいですよね〜(笑)

右の写真のものはウォーマーで暖めてローラーで引くタイプの「固形ソフトグランド」です。

液体ハードグランドに少しだけサラダ油を混ぜて、「液体ソフトグランド」を自作することもできます

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固形のソフト・グランド

ソフト・グランド実践編

■ソフトグランドを塗る

ハードグランドと同じように、ウォーマーで暖めた銅版にローラーで伸ばしていきます。エッチング実践編を参照

ここで注意!ソフトグランドは柔らかいので、少しの熱でもすぐ溶けます。したがって、ハードグランドの時の様にウォーマーをギンギンに熱しなくても大丈夫。写真のように熱したままだと、表面がぬるぬるになります。

その後、版をいったんウォーマーから下ろして、冷ましながら伸ばしていけばきれいに引くことができます。

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ウォーマーからおろして
冷ましながら伸ばす

■マチエールを転写したいものを銅版に乗せる

銅版をプレスの上に置き、転写したいものをそっと乗せていきます。

  • 葉っぱの葉脈(上の作例)
  • 寒冷紗、布(固めのほうが模様が出やすい)
  • しわしわにしたアルミホイル
  • みかんのネット

…など。

注意点ですが、銅版プレスのローラーや鉄板を痛めてしまうので、金属のものは絶対使ってはいけません。

転写するものを置いたら、プレスしたときにフェルトに銅版のソフトグランドが付いてしまわないようにロール紙やわら半紙を重ねます。

■プレスに通す

プレスします。このとき、刷りの時のような強い圧だと、せっかくの紙やアルミホイルのしわなどのマチエールがつぶれすぎてしまいます。

目安としては、やや軽め。転写するものが軽く銅版にひっつく位がよいでしょう。

■プレスしたものをはがす

ソフトグランドをぬった部分に、プレスしたもののマチエールがくっきり出たら大成功!ソフトグランドはべたべたしているので、注意して、そっと転写したものをはがします。

■不要な部分を黒ニスで止める

不要な部分に黒ニスを塗ります。たいていの場合は、普通の線描のエッチング→ソフトグランド、というプロセスを踏むかと思いますので、その場合はエッチングの線を頼りに黒ニス作業をします。

そうではなく、いきなりソフトグランド!という場合は、何かで下絵のあたりをつけておく必要がありますが、大変見づらいです。青い色の銅版用の感光乳剤やマジックインキを使って、あらかじめ銅版に線を描いておいて、その上からソフトグランドを塗ると良いでしょう。その線を頼りに、黒ニスを塗ります。

■腐蝕する

腐蝕は時間を頼りにするのではなく、時々版から出して目で見て判断しましょう。転写するものによってだいぶ時間が変わります。十分腐食したところで、ソフトグランドと黒ニスを灯油やガソリンで取ります。

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レースの柄を転写した例。
完成作品はこちら

■ソフトグランドに使えるいろいろな素材

この技法の面白いところは、紙やアルミホイル、葉っぱといった柔らかい身近な素材が、銅という硬い版に腐蝕によって「刻印」されることです。

色んなものを試してみたいですね。


腐食した銅版。



それを刷ったもの。
左から、ペーパーナプキンの模様、ストッキング(固め)、ストッキング(柔らかめ)

■応用編