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銅版画

ドライポイント B.実践編 
&すべての技法に共通の版の準備

 
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すべての技法に共通の、版の準備

プレートマークとは

銅版画は、非常に強いプレス圧で刷るため、購入したてで断面が直角の銅版をそのまま刷ると、刷る紙が破れたり、上にかぶせたフェルトが破れたりすることがあります。

そこで、銅版の四辺を金ヤスリなどで斜めに削ります。銅版の四辺の45度に落とした部分は「プレートマーク」と言います。

「プレートマークを落とす」のは、ドライポイントに限らず、銅版のどの技法でも、必ず最初にやらなくてはならない共通の下準備です

「この作品は銅版かな?リトグラフかな?」と思ったときには、作品の周りにプレートマークの刻印があるかないかでたいがい見分けがつきます。



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購入したての銅版。

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プレートマークを落とした銅版

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刷ったときに作品にもプレートマークが刻印される

プレートマークを削る

■版の四辺を、金ヤスリで45度に落とす

さて、実際にプレートマークを削っていきましょう。上の図ではプレートマークは45度の角度になっていますが、実際はもっとアバウトで構いません。要は、紙が切れないように銅版の直角の断面が和らげば良いのです。とはいえ、なるべく広めのプレートマークのほうが綺麗に拭くのが楽なので、ヤスリの角度は30度くらいで削ったほうが早いし楽です。

一番上の写真では金ヤスリを使って落としています。その下の写真は、電動工具「ベルトサンダー」で落としています。

どちらの場合もクランプでしっかり銅版を机に固定して作業すると楽です。

版の端っこで手を切ったりしないように、すこし角を丸めておきましょう。



プレートマークは、版の作りはじめの時はヤスリで削るだけで十分です。ヤスリで削った後はまだヤスリ目が付いているのですが、ピカピカにしても、作画製版の段階で傷が付いたり、特に腐蝕銅版の場合は気をつけていてもボロボロになってしまったりするからです。

通常、試し刷りをして「これでオッケー!次からは本刷り!」…というタイミングで、最初にヤスリだけで削ったプレートマークをさらに綺麗にツルツルにします。

その時使うのは三角スクレッパーです。。三角の刃のところをプレートマークに直角にあて、ヤスリ目でギザギザになったところを平らにこそげ取り、反対側のバニッシャー(この場合はカーブしている部分ではなく真っ直ぐな部分を使って)で、力を入れてピカピカに光るまで磨きます。 こうすると、刷る時にウエスに少し白ガソリンをつけて拭くとさっとインクが綺麗に取れます。

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金ヤスリでプレートマークを削る

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ベルトサンダーでプレートマークを削る

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次の辺を削る。
銅版はクランプでしっかり机に固定する

■版面をピカールで磨く

画材用の銅版として売ってあるものは、機械で研磨してあり綺麗でそのまま使えます。が、細かい研磨の筋が残っていて、厳密に言うと刷った時「真っ白」にはなりません。

このページではドライポイントという、腐食液などを使用せず直接引っ掻いて製版する技法を使いますので、最初に金属磨きのピカールを使ってピカピカにします。ピカールを銅版に少し落とし、顔が映るくらいに磨きますが、この時、フエルトの切れ端をタコ糸で縛った磨き棒を使うと力が入りやすいです。

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フエルトを丸めタコ糸で縛った「磨き棒」

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磨き棒を芯にしてウエスをかぶせる

■ピカールで磨くケースバイケース

エッチング実践編以降の技法を使う時、多少版面に曇りがあったほうがその後の「グランド塗り」が定着しやすいということもありますので、永沼版画アトリエでは「エッチングの時はピカールで磨く工程を省く」と教えています。

エッチングは腐蝕で強固な線が彫れるので、後からピカールで磨いても消えたり弱くなったりしないからです。

また、ドライポイントでも、最終的に絵が真っ黒になる予定の絵などは、このピカールの工程を省いても全く構いません。

もちろんメゾチントの場合も同じです!真っ黒けにするわけなので、磨くのは時間の無駄ですね〜。

この「ピカールで磨く作業」は、たとえばアクアチントの調子を整える、銅版の傷を磨く等、作画の過程でも使うことがあるということを覚えておいてください。

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版面にピカールをたらす

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磨く。ウエスが黒くなったら
白い面をあて、ピカールを拭き取る。
これを繰り返し、ピカピカになるまで磨く

ドライポイント

銅版を引っ掻く事によって、金属のめくれ(「バー」と言います)が出ます。 そこに、インクがひっかかって、独特の滲んだような線が表現できるのが、ドライポイントの最大の特徴です。

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■描画しましょう!

下絵を転写する場合は、トレーシングペーパーに絵を転写し、銅版とトレペの間にカーボン紙をはさみ、線をボールペンや鉛筆でなぞります。

銅版にカーボン紙の線がうつりますが、そのままでは線がこすると消えてしまいますので、ベビーパウダーなどを軽くはたいておきます。これでOK!

また、それほど緻密な下絵がなくても良いという人は、マッキーで銅版に直接あたりをつけても大丈夫です。(マッキーは、あとでホワイトガソリンやアルコールで拭けば消えます。)

ポイントで、自由に描画していきます。

ちょっとやそっとの失敗は、スクレッパーでけずったりバニッシャーで磨いたりすれば良いので、なるべく下絵にとらわれず、伸び伸びと線を描いてみることが大切です。失敗をおそれてこわごわ描画したりすると、絵が面白くなくなってしまいます

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■いろいろな工夫をしましょう

  • 紙やすりでわざと傷をつける
  • 荒目ヤスリで銅版をごしごしこすると、細かい線がたくさんできます。
  • 細かいヤスリだと、うっすらとグレートーンがつきます。
  • 点を打ってみる
    線とは違った「バー」が出来てオモシロイ効果がでます。
  • ポイントを斜めにして線を描く
  • ルーレットでグレートーンを出してみる。
  • ルーレットで線を描いてみる
  • カッターナイフの刃をガムテープなどで束ねたもので銅版をひっかき、真っ黒な調子を作る。
    作った調子を削ってみる。(手を切らないように注意して!)
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バックは紙やすりで作った調子

この作例は永沼版画アトリエの
受講生の方の作品を
使わせていただきました。

■描いた調子が良くわからないときは

このドライポイント言う技法、「版を引っ掻くだけ」と最も手軽な技法なのですが、描いたものがどのくらいの濃さなのか良くわからない、実は難しいものです。

そんな時は、金属磨きのピカールを少し画面におとして全体を軽くふいて見ます。 バーの立っているところに引っ掛かって、黒い調子になり、全体のトーンが見やすくなります!

でも、あまりごしごしこすってはいけません。弱いバーが磨かれて消えてしまいます。

■完成!さあ、刷ってみよう!

刷りの工程は 刷ってみよう!を参照して下さい。

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